SES業界では、企業同士が協力しながら多様なプロジェクトへ人材を供給しています。この仕組み自体は、必要なスキルを迅速に確保できるという点で合理性があります。
一方で、商流が何層にも重なる多重下請け構造には、無視できない問題もあります。
案件情報が伝言ゲームのように変化する。誰が要員を管理しているのか分かりにくくなる。トラブル時の責任主体が曖昧になる。そして、間に入る会社が増えるほど、現場で働くエンジニアへ還元される報酬が減っていく。
PonTech Labは、こうした構造を問題視しています。
そのため、SES事業では、原則として自社の社員、またはPonTech Labと直接契約している要員のみを提案する運用を採用しています。
多重下請け構造で起こりやすい問題
多重下請け構造の問題は、単に「間に会社が多い」ということではありません。重要なのは、商流が深くなるほど、情報・責任・利益の三つが分散しやすくなる点です。
案件情報が正しく伝わらない
商流が深くなると、案件の目的、具体的な業務内容、必要なスキル、現場の雰囲気、働き方などが複数社を経由して伝わります。
その結果、募集要項では魅力的に見えたものの、実際に参画すると業務内容が異なる、求められる役割が違う、常駐条件が聞いていた内容と違う、といったミスマッチが起きやすくなります。
これはクライアントにとっても、エンジニアにとっても不利益です。
要員の実態を把握できない
提案する会社と、実際に要員を管理している会社が異なるケースでは、スキルシート以上の情報を把握できないことがあります。
技術力だけでなく、コミュニケーション特性、希望するキャリア、得意な業務、避けたい条件まで理解しなければ、本当に適切なマッチングはできません。
面識のない要員を、書類だけで次の会社へ紹介する運用では、責任ある提案は難しいとPonTech Labは考えています。
問題発生時の責任が曖昧になる
稼働開始後に認識齟齬やパフォーマンス上の問題が発生した場合、商流が深いほど連絡経路が長くなります。
クライアントからの相談が要員本人へ届くまで時間がかかり、要員からの困りごとが現場へ共有されるまでにも複数社を経由します。
その間に問題が大きくなってしまうこともあります。
誰が要員をフォローし、誰が改善に責任を持つのかが曖昧な状態では、安定したプロジェクト運営はできません。
エンジニアへの還元が減る
商流に複数の企業が入れば、それぞれに営業・管理コストが発生します。その結果、クライアントが支払う金額と、エンジニア本人が受け取る報酬の差が大きくなりやすくなります。
もちろん、すべての中間企業が不要というわけではありません。案件開拓、契約管理、フォローなど、価値を提供している企業も多くあります。
しかし、実態としてほとんど関与せず、情報を横流しするだけの商流が重なることには疑問があります。
PonTech Labが採用している運用
PonTech Labでは、提案対象を次の要員に限定しています。
- PonTech Labの社員
- PonTech Labと直接契約している業務委託要員
つまり、他社から送られてきた要員情報を、そのまま別の会社へ再提案することは原則として行いません。
これは、商流を完全に一層にするという意味ではありません。PonTech Lab自身がエンドクライアントと直接取引していない案件もあります。
それでも、自社が提案する要員については、PonTech Labが直接関係を持ち、責任を持って説明・フォローできる状態を維持します。
なぜ「自社要員だけ」にこだわるのか
スキルと人物像を把握したうえで提案するため
PonTech Labは、単にスキルシートのキーワードが一致しただけでは提案しません。
本人との面談や日常的なコミュニケーションを通じて、技術力、経験、希望条件、働き方、コミュニケーション特性を確認します。
クライアントへ説明できない人材を提案しないことが、最低限の責任だと考えています。
要員本人の意思を尊重するため
案件情報を本人へ正確に伝え、参画意思を確認したうえで提案します。
本人が知らないうちにスキルシートが複数社へ流通する、異なる条件で提案される、といった状態は避けなければなりません。
エンジニアは商品ではありません。本人のキャリアや生活に関わる重要な選択だからこそ、透明性が必要です。
稼働後も責任を持ってフォローするため
SES営業の仕事は、参画を決めた時点で終わりではありません。
稼働後の状況、現場での困りごと、期待役割とのズレ、今後のキャリアを継続的に確認する必要があります。
直接関係のある要員だけを扱うことで、問題を早期に把握し、クライアントと要員の双方へ具体的な対応ができます。
信頼を積み上げるため
人数を増やすだけなら、他社の要員情報を大量に集め、広く提案する方が効率的かもしれません。
しかし、それでは一人ひとりの情報精度やフォロー品質を担保しにくくなります。
PonTech Labが重視するのは、短期的な提案件数ではなく、「この会社が紹介する人なら安心できる」と思っていただける信頼です。
この方針には弱点もある
自社要員だけに限定すれば、提案できる人数や対応可能な技術領域は限られます。
どのような要望にもすぐ人材を提案できるわけではありません。案件に合う要員がいなければ、正直に対応できないとお伝えすることもあります。
しかし、対応できない案件へ無理に人材を当て込むより、責任を持てる範囲を明確にする方が、長期的にはクライアントと要員の双方にとって良い結果になると考えています。
規模の拡大より、関係の質を優先する。それがPonTech Labの選択です。
多重下請けを否定するだけでは変わらない
SES業界の構造的な課題は、一社の方針だけですぐに解決できるものではありません。
また、協力会社との連携そのものを否定する意図もありません。企業同士が互いの強みを生かし、適切な責任分担のもとで人材を支援することには大きな価値があります。
問題は、誰が何の価値を提供し、誰が要員に責任を持っているのか分からない状態です。
だからこそPonTech Labは、まず自社が管理できる範囲を明確にし、社員・直契約要員だけを提案する運用を続けています。
まとめ
PonTech Labは、SESの多重下請け構造によって生じる情報の劣化、責任の曖昧化、エンジニアへの還元低下を問題視しています。
その対策として、提案する要員を社員および直接契約している要員に限定しています。
大量の要員情報を横流しするのではなく、自社が人物像とスキルを把握し、本人の意思を確認し、稼働後まで責任を持てる人材だけを提案する。
派手な仕組みではありませんが、SESをより透明で、誠実で、持続可能な事業にするために必要な運用だと考えています。
PonTech Labはこれからも、クライアントとエンジニアの双方に対して、説明責任を果たせるSES事業を目指します。
